テレクラを通して見る「体験」の需要

テレクラを通して見る「体験」の需要

「物」を買うことや何かを所有しているということが個人のステータスになるというような時代が過ぎ去り、「物」ではなく「体験」を買うというような選択肢が現在では主流になっている、ということがよく言われていますし、耳にする機会も多いのではないかと思います。

「物」ではなく「体験」を買うということを優位に置く、そのような時代であるという考えを自分のなかですんなりと受け止めることや、「物」と「体験」に優劣をつけることなどは私にはできませんし、正直なところ「人それぞれである」というような身も蓋もない結論を出すことしかできないものであるとも思います。

「物」は「物」で私はたえず所有していたいですし、「体験」は「体験」で求め続けている。私個人に関していえば、時代と関係なく、「物」も「体験」も同時に獲得しようとしてきたと思いますし、どちらかを不要であると感じたことがありません。

私が「物」と「体験」を巡る二項対立に対してこのように曖昧な態度を取ることになったのは、やはり、「テレクラ」を通して物事を考えるクセがついているからなのかもしれません。

「出会い」を求めるにせよ、「テレフォンセックス」をプレイするにせよ、「テレクラ」は、「物」ではなく「体験」を購入するサービスです。

個室テレクラがはじめて登場したころ、第一次テレクラブームのころは、現在と違って、「物」の所有に価値があると人に広く認識されており、「体験」よりも「物」が優位に立つ、というような言説が強い、いわば「物」が主流の時代でした。

そんな、「物」が主流とされていた時代のなかで、「テレクラ」という新しい遊び、「体験」を購入するサービスは登場して間もなく人気を博し、社会現象になるほどの流行を獲得することになりました。

逆に、「物」よりも「体験」が重視されるような時期の始まりと歩調をあわせるようにして登場した「無店舗型テレクラ」は、当時以上に「体験」を購入しやすくなったサービスでありながらも、「知る人ぞ知る」というような位置におさまっている印象が強くあります。

このような状況を見ていきますと、冒頭で書いたような「物」と「体験」の対立、時代ごとに区切られる片一方が優位な状況などは、的はずれな視点なのではないか、ということを考えさせられます。

体験の時代とやらにむしろ落ち着きをみせた現代のテレクラ

もし、現在が本当に「体験」を買う時代であるならば、「テレクラ」は、それこそ「物」が優位とされていた時代以上に人に求められているサービスになっているはずなのですが、現状を見ると、どうもそのようではありません。

むしろ「物」が強い時代にこそ「体験」を求めて人が「テレクラ」に集まっていた、というような安易な構図が見えてきそうでもあります。

しかし、そのような構図を見てしまいそうになるとしたら、「物」が主流である、というような過去の言説が、現在の「物」を不要と見る言説の登場によって改めて際立ったものとして現れたためでしかないでしょう。

「テレクラ」を通して見ると、人が「物」を通して幸福を実感していたとされる時代においても「体験」は人に求められ続けられてきたことがわかるのだし、逆に「体験」が主流とされる現代においても、完全に「体験」のみを求めているのではなく「物」の執着から人が逃れたわけではないし、「体験」への欲望だけが爆発的に膨らんだわけではない、ということを知ることもできるように思います。

「体験」への欲望というものは、それが流行っていようがいまいが、「物」への欲望と同じように、たえず人のなかにあるものではないでしょうか。

「体験」の優位が過剰に語られる状況のなかで考えると現在の「テレクラ」はやや落ち着いている印象になるかもしれませんが、その「テレクラ」の落ち着きを通すことによって、優位とされている「体験」というものが実際にはどの程度人に求められているものなのか、ということを捉えるためのモノサシにもなりそうです。

テレクラというものが登場してから、下火になることを経験しつつも、現在もひっそりとした形態でありながら継続しているということは、時代と関係なく一定数の人が「体験」というものを購入したいと考えていることの証明のようにも思われます。

「『体験』の時代だからこそいまこそ『テレクラ』を!」ということを強く主張するようなことにはあまり興味がないのですが、それが捏造された言説であっても「『体験』の時代」がもしきているのであれば、購入可能な「体験」の選択肢の一つとして「テレクラ」というものを提示したいとは思います。

「体験」を求めている人がそもそも「テレクラ」というサービスを知らない、ということは大いにありうることです。もし、そのような「体験」を求めている現代的とされている人々が「テレクラ」を知らないのであれば、「テレクラ」という「体験」を買うサービスの存在を広く知らしめるに越したことはないでしょう。

その紹介にあたっては、無店舗型テレクラが「体験」というものを初回利用においては「無料」で提供しているという情報を添えることを忘れないようにしたいところです。